ただ今、今月のヤフオク出品中です。
6月19日(日) 21時00分〜22時30分ごろ終了予定です。
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昨日アップした記事で宣言した通り、珍しくぱぴんどう連続アップです。
久しぶりのご対面「拾い喰い」。
3年半ぶりに、ロンドンから日本に帰って来はった入江さんと「拾い喰い」。
今回はハットリさんにメインテナンスをよろしくということで「拾い喰い」を連れて来はりました。
想像以上にロンドンは漆芸品にとって過酷な環境らしく、そういえばヨーロッパに渡った古漆器なんかもよく割れたり漆が浮いたりすると聞きます。
「拾い喰い」は入江さんの酔狂な想いから、ハットリさんが作り上げた、くらわんかの陶片と木地椀の合体創作碗。
(出自についてのことは、こちらをご参考ください。
入江敦彦の喰いしん坊漫才 第22回「拾い喰い」
ぱぴんどう 「ひろいぐい」
木地の部分が普段の使用とロンドンの激しい乾燥に耐えられず、木地が動いてしまっている状態でした。
昔から霧の街ロンドンというくらいですから、訪れたことがない私なんかは、てっきりシケシケなのかと思っていましたが、入江さんのお話によると、めっちゃ乾燥してんねんでぇ、と。
雨で濡れたシャツが、店に入って1時間ほどで出てくるころにはもう乾いているほどの乾燥度合。
霧の街って言われてたんは、昔のロンドンの産業革命時のスモッグのこともあるんえ、とのことです。
知らんかった!
で、「拾い喰い」。
ハットリさん曰く、思ったより重症とのこと。
なんせ木地の部分が動いてしまっている状態ですから。
勘違いされている方が多いのですが、漆はすぐにめくれるとか、剥がれるとか言う方もいらっしゃいますが、完全に乾いた漆は実はほとんど全く変化しません。
そして、酸にもアルカリにも強い。
漆が剥がれるというのは、実は中の木地が動くことによって、動かない漆の部分が割れてきて剥がれるという現象なんです。
ハットリさん、「まぁ、やってみますわ。」ということで、割れ部分に下地漆を補填しムロに入れること一週間。
「さーて、固まったかなぁ。」と思って見てみると、湿気を吸って木地がまた動く。という悪循環。
この時ムロから「拾い喰い」を出したハットリさんは近年流しているのをみたことがない程の冷たい汗を顔から大量に滴らせ、「あ、あかん・・・出来ひん・・・。」と。
この時点で入江さんのイギリス帰国まであと1ヶ月。
まともなやり方では到底不可能・・・。
現状回復では今後の使用も難しそうなため、「拾い喰いバージョン2」計画を発動。
とにかく木地が水分や空気に触れないようにするため、自慢の木地見せ部分を拭き漆から塗り漆に。
接合部分の縁取りを歌舞伎の隈取りのように太く塗り直して強度を持たせ、木地の大敵になっている湿度のあるムロには入れずに急ピッチで仕上げるため、スーパー漆と呼ばれる漆のウルシオール成分を特殊抽出した、神社の鳥居などを塗る際に使う究極の速乾き漆を使用し、ムロに入れずに固める作戦。
あとは神頼みの雨乞い。
現代都市生活者がこれほどに雨乞いしている姿を私は見たことがありません。
ムロほどの湿度は木地の動きを進めるので、この状態になっている「拾い喰い」には大敵ですが、適度な温度と湿度が揃わないと漆は硬化しません。
京都の人はご存じ、この6月の前半は湿度が高く、雨が降った日も多かった。ハットリさんの願いは聞き届けられた!
整った環境下で使うなら、スーパー漆は1日に2回の作業が可能なほどの硬化の速さ。
漆を触る方はご存じかと思いますが、漆の作業というのはいくら頑張っても早くは出来ないんです。
本来は一作業するごとにムロに入れて数日固めるということの繰り返し。これに時間が掛かる。
2月など乾燥してるわ寒いわだと、漆は1週間経ってもびちゃびちゃのまんま。
ひたすら作業をするハットリさん。
「オレ、もう何屋かわからん・・・。」などと言いつつ、店にやって来て昼に塗り、閉店後の夜中に塗り。漆の層を幾重にも重ねていきます。
こうなってくると技術云々というより、やればやるほど強くなる!という祈りにも似た気持ち、とのこと。
そして、いよいよ入江さん帰国直前のお渡し期日の前日。
「で、どうよ、ハットリさん?」と尋ねる私あさひに、ビールをくいっとあおりながら「やれるだけのことはやった。これ以上今の時点で出来ることはない。」と珍しく恰好よく嘯くハットリさん。
「よかったやん!!入江さんにも喜んでもらえるなぁ。」と言うと、「いやぁ、あかんわ。また動くかもしれへんし、さっぱり分からん。オレ、イギリス行ったことないし。」と!!
おぉ〜いっ!
どう始末つけはりますのん!?
実はしかし、ハットリさんはこういった事態を予測していたのでしょうか。
そういえば、今回帰国された最初のご来店時に、入江さんに馴染みの漆屋さんを紹介し、ご本人に「入江さん、一番簡単な漆の扱いだけは覚えてください。」と話をしていました。
秘策や!親切なようで実は丸投げ?
定期メインテナンスはお客さま自らやってくれ、と?
これでいいのか?とちょっと心配していたのですが。
そして約束通り入江さんは漆屋さんに行き、拭き漆のレクチャーを受け、自腹で漆を買わはったとのこと。
「これでワシも漆使って簡単な直しとか出来るようになるし、楽しみやわぁ。」と笑顔で話す入江さん。
「定期的なメインテナンスを続けるということは、漆を最も永く強く持たせる、これがベストなはず。」とハットリさん。
なんや、ほんまに秘策やったんや。丸投げとか言うてスンマヘン。
またロンドンの過酷な乾燥に耐えられるのか一抹の不安は感じますが、私はバージョン2になって前より力強く、恰好よくなったと思います。
ご病気から復活された入江さんの相棒として、更によく似合う「拾い喰い バージョン2」だと。
そして、入江さんが「また2年後にねー。」と最後の挨拶の際。
例によって、ニコニコと「次の日本帰国までにハットリくんに頼みたいことがあるんやわぁ。」と。
またや・・・。
コワいぜ、生粋の京都人。
名は明かせませんが、今回はT町の、まぁ、仮称D吉さんとしましょうか、の入れ知恵も加わってダブル生粋京都人からの、お約束の宿題。
ニコニコしながら無理難題〜。
むにゃむにゃ言うてたら、また受けちゃってるよ、こちらも京都のお人ハットリさん・・・。
入江さんの、開化堂カフェのいちんち店長さん。
イギリス日常紅茶も、入江さんのお抹茶も、限定お菓子も、大層おいしゅうございました。
2016年06月14日
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